麻痺手の学習性不使用に対する脳梗塞リハビリは?
横浜市港北区新横浜地区にあります脳梗塞リハビリ専門 保険外サービス 「Discovery style」施設長の阿部です。
先日、手の動きコースをご利用していただいているお客様と脳梗塞リハビリを行わせていただきました。
私が脳梗塞リハビリの保険外サービスの施設をスタートさせていただき、脳梗塞を後遺されたお客様とお話をさせていただく中で、「こっち(麻痺手)を使わなきゃいけないことは分かっているんだけど、どうしても早く用事を済ませてしまいたいから、ついこっち(非麻痺手)を使っちゃうのよね」と生活状況を教えていただく機会がありました。
私も一般病院の回復期病棟でリハビリ業務を行っていた時も、集中的に麻痺手を使用することを患者様と一緒に考えてきました。
麻痺手を使用して、行動変容を促す方法は現在ではCI療法などで多くの結果が報告されています。
しかし、集中的なリハビリが行えない180日以上を経過された方々にどのように麻痺手の使用を促していけばよいか?
今回、この状況を少しでも良い方向へ向かうために、私にできることは何か?をまとめてみたいと思っています。
1.学習性不使用の改善のために
脳梗塞後上下肢麻痺を後遺された多くの方々は、日常生活が送れるように代償的な手段を学習すると同時に、障害された上下肢を使用しないという選択を学習する。これを「学習性不使用」という。
上記はMerzenichら(2016)の研究によって明らかにされています。
この研究は運動障害によって機能が低下し、手指を使わなくなると、その脳領野は小さくなり失われ、逆に使用頻度が増加した脳エリアが拡大したというものです。
この研究によって、脳は使用方法によって変化することができる「可塑性」に富んだ臓器であることが分かったそうです。
上記の研究から言えることは、CI療法のように過剰に使用してしまう非麻痺手の活動を抑制して、麻痺手を強制的に使用することで脳の領野の再編成を促すことが麻痺手に対する脳梗塞リハビリに必要だということを示していると私は考えています。
しかし、非麻痺側の活動を抑制させ、麻痺手を強制使用させることは、私もセラピストとしてリハビリを提供させていただいた経験がありますが、リハビリを行うための十分な環境設定や詳細な取り組み内容の工夫が必要です。
ただ麻痺手を強制使用するだけではなく、リハビリを行う内容に課題の難易度を設定し、徐々に難易度を対象者の機能レベルによって段階づけていくことが必要となります。
このように麻痺手の学習性不使用から脱却する過程には、工夫された仕掛けが重要な訳です。
2.当施設で出来ることは?
先日、手の動きコースをご利用しているお客様とのリハビリを考えてみたいと思います。
お客様は脳梗塞後遺症をお持ちですが、現在お仕事復帰をされている中で、当施設に通ってきていただいています。
その中で、お客様との会話の中から、このようなお話を伺いました。
「入院中はもう少し自分のイメージしていた通りに手を動かすことができていたのに、今は動かせないんだよな」とお話をされました。
麻痺手の状態は浮腫傾向にありましたが、関節可動域などには手を運動させるために支障となるような大きな問題はない状態です。
また、継続した脳梗塞リハビリにより麻痺側肩関節の安定(お客様の言葉では「肩の重さが感じなくなってきた」)が出現してきました。
しかし、ご自宅での麻痺手の使用状況を伺うと、「今思い出すと、せっかちな性格もあるかもしれないけど、こっち(非麻痺手)でやってしまうことが多いよ」とのことでした。
ということは、入院中は毎日リハビリの中で麻痺手を集中的に動かす機会があるのに対して、現在ではリハビリは継続されていますが、入院時と比較して麻痺手を使用する機会が明らかに減少してしまっていると考えることができます。
上記により「学習性不使用」の状態に近い可能性がありました。
そこで、お客様の麻痺手の機能レベルに応じた課題を設定し、麻痺手を使用する練習を多く1回のリハビリ内で設けました。
その結果、対立運動の範囲がリハビリ前より大きくなりました。
この結果からお客様は「やっぱり使っていかないといけないよね」という麻痺手の使用の重要性に対する「気づき」を得られたコメントをいただきました。
このリハビリを通して、改めて麻痺手の不使用状態が引き起こす「学習性不使用」についてお客様と考え直すことができた時間でした。
今後も当施設でどのようなことが出来るのか?探求し続けていきたいと思っています。
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